お母さんとおばあちゃんへ
もう30年以上前になりますが、私が東京の大学に進学することになり、実家の近くの駅まで母やおばあちゃんが見送りに来てくれた時のことです。その日は春風が非常に強くて吹いていて、私がかぶっていた帽子が、“あっ”と言った瞬間に風に飛ばされ、
ホームからホームを転々、やがて線路に落ち、ころがり、また飛びといった感じで、駅員さんに拾ってもらうまで大騒ぎでした。そんなアクシデントがあったせいか、私は急に不安な気持ちと、早くもホームシックな気分が広がり、思わず涙ぐんでしまったものでした。まだまだ子供だったんですね。あの時、今は亡きおばあちゃんが言った「そんなにしてまで行くことはない」という言葉が今でも心に残ります。誰にでも旅立ちの時はあります。旅立ちはうれしい想い出ばかりではありません。つらいこともあります。でも、それを乗り越えることで、人は少しずつ大人になるのだと思います。リクエスト、大竹しのぶさんの「みかん」をあの日駅で見送ってくれた母と今は亡きおばあちゃんへ贈ります。
愛知県稲沢市赤池池田町 ラジオネーム「コアラ」さん
|