故郷を離れた友たちへ
昭和37年に長崎県の島原の高校を出て、神戸で就職をしました。それから昇級試験を受けて受かったことで、東京、名古屋、仙台、大阪など転勤を繰り返して来ました。就職のために田舎を出るのがつらく、友達や家族と別れて暮らすのが厭で、仕方がありませんでした。普通は都会へ出てみたいとか、一旗挙げて帰りたいと思う人が多い中、保守的だったのか、内向的だったのか、私はまったく外に出たいという気持ちはありませんでした。それが皮肉なことに、転勤一〇回、単身赴任九年と自分でも考えられないような人生を送って来ました。いまは両親も亡くなり、田舎には姉夫婦しかいませんが、今でも田舎に帰りたい、Uターンしたい気持ちはいっぱい持っています。しかし、なにせ鬼嫁、怖い女房の、都会を離れたくない、子供の近くにいたいとの気持ちに逆らえず、帰れないでいます。この歌を聴くたびに、神戸へ向かう夜行の就職列車の暗い窓に写っていた自分の涙顔を思い出します。当時同じように故郷を後に旅立った友たちにこの曲を贈ります。
埼玉県越谷市 石橋さだむさん |