姉へ
二十数年前、私は自らが運転する自動車事故で、下半身不随となり、車イスの生活というハンデを背負うようになりました。その時、すでに両親はなく、私の面倒は姉が看てくれました。でも、自暴自棄になった私は、一生懸命身の回りの世話をしてくれる姉に、八つ当たりをしたり、罵声を浴びせたりしました。そんなある日、姉の部屋から音楽が聞こえてきました。ドアの隙間からこっそり覗くと、姉がこの丸山圭子の「どうぞこのまま」のレコードをかけて聴いていました。どうやら姉はこの曲を聴きながら、向こう向きで泣いているようでした。私は、急に姉にすまいないと思いました。以来、私は変わりました。姉との関係も昔のようになりました。現在は、姉の世話でリハビリも進み、杖を突いて歩けるまでになりました。この二十数年の間に姉も結婚し、上の子は大学生で、来年は就職を控えています。私のようなテツを踏まないためにも、車の運転だけには気をつけてもらいたいと願うばかりです。
栃木県鹿沼市 ラジオネーム「月の王子さま」さん |