M子さんへ
私が曲を贈りたい相手は、今から二十七年前の秋、ドライブで一緒に岐阜の郡上八幡に行ったM子さんです。百貨店には花と呼ばれる美人がいますが、彼女も売り場に咲くかれんな名もなき花でした。そんなある日、彼女とドライブで郡上八幡に行くことになったのです。僕の胸は高鳴っていました。当日はお店の定休日。天気は快晴。郡上八幡の紅葉は彼女を歓迎するかのように素晴らしく、助手席に彼女がいるだけでハンドルを持つ手がふるえたものです。でも、残念ながら、彼女とのドライブは、それが最初で最後になり、二十七年の月日が流れます。デパート不況は私も例外ではなく、今は別の会社で働いています。娘もあの頃の彼女と同じような年頃となり、改めて思うのです。きっと彼女は、少女から大人への階段を昇っていたシンデレラだったと・・・彼女は、今どこかで家族に囲まれて幸福に暮らしていると思います。今さらなんで二十七年前のことをと思われるかもしれませんが、どうしてもあの日どこかに置き忘れて来た「ありがとう」が言いたくてペンをとりました。
愛知県江南市のラジオネーム「木曾川の雑木林に住むトトロ」さん |